結局、手が遅いんじゃなくて「止まってる」だけなんだ(結論)
デザイン業務の時間削減と聞くと、「もっと速く、手を止めずに作らなきゃ」と思いがちです。
納期に追われていると、どうしてもそうなります。
でも、10年この仕事をやってきて痛感するのは、
削るべきなのは「実際に手を動かしている時間」ではないということです。
手を動かしている時間だけを短くしようとすると、かえってミスや修正が増えて、納期前に苦しくなりやすいです。
- 「どうしようかな」と迷う時間
- 「あの素材どこだっけ」と探す時間
- 「あ、間違えた」と戻る時間
本当に自分の首を絞めているのは、この3つです。
「ずっと忙しく働いているのに、なぜか作業が終わらない」
もしそう感じているなら、スキルの低さを疑う前に、自分が制作中に何回「思考停止」しているかを数えてみたほうがいいかもしれません。
時間削減できない原因は「手が遅い」より「止まる回数」が多いこと
デザイン業務で時間が足りなくなる原因は、作業スキルだけではありません。
途中で何度も止まっていることが問題です。
たとえば、こんな場面。
- 素材を探すたびにフォルダを開き直す
- 過去データの保存場所が分からない
- 修正指示を見返すためにメールやチャットを遡る
- 方向性が曖昧なまま作り始めて、途中で判断が止まる
- 提出前にサイズ違いや誤字に気づいて書き出し直す
こうした細かいロスは1回あたり数分でも、1日に何度も起きます。
しかも厄介なのは、本人が「忙しい」と感じるわりに、どこで時間が消えたか把握しにくいことです。
メールも返している。素材も探している。修正も確認している。手はちゃんと動かしています。
なのに、肝心の制作があまり進んでいない。
残業が続くのに制作物の本数が増えないなら、技術不足より、止まる場面の多さを疑ったほうが早いです。
1日90分以上をドブに捨てていた正体
以前の私もそうでした。
朝から晩まで必死に作業しているのに、肝心の「デザインしている時間」が驚くほど短い。
朝にメール返信で25分、素材探しで20分、修正指示の確認漏れで30分、途中の判断迷いで15分。
メールを返し、素材を漁り、指示書を読み返し、過去の似たようなデータを探してPC内を彷徨う……。
ひとつひとつは数分のロスです。
でも、それが積み重なると1日で平気で90分、下手をすれば2時間くらいは「実制作以外」に溶けていきます。
一番厄介なのは、サボっている自覚がゼロなことです
素材探しに苦労している最中も「ちゃんと仕事をしている感」だけはあるから、原因に気づきにくいんですよね
制作が遅いのではなく、制作の前後にある細かい足止めが多かっただけでした。
ここに気づいてから、作業を速くする努力より、迷いと探し物を減らす工夫に切り替えたら、残業時間が月18時間から7時間まで落ちました。
解決策① 着手前に「完成条件」を30秒で言葉にする
作業に入る直前、めちゃくちゃ適当でいいので「完成の着地点」を書きます。
たとえば、バナーならこのくらいでOKです。
- 20代女性、親しみやすさ全振り
- 「安い」より「安心」
- クリック率を取りに行く
- 写真よりキャッチコピー優先
これをやらないと、作っている途中で脳内会議が始まります。
やっぱり高級感を出したほうがいい?
写真を主役にするべき?
文字、もっと大きいほうがいいかな?
そもそも何を一番見せたいんだっけ?
この迷いが一番の敵です。
きれいな企画書にする必要なんてありません。
自分が迷った時に「あ、こっちだった」と正気に戻るための、自分専用の標識でいいんです。
頭の中だけで持っていると、作業中に簡単にブレます。
でも、短くてもテキストで置いておくと、迷ったときに戻れる場所ができます。
ラフ、バナー、SNS画像、資料デザイン、サムネイル。
ほとんどの制作で使えます。
解決策② 「白紙」の恐怖を、半完成品で消す
「さあ作るぞ」と意気込んで真っ白な画面と向き合う時間は、意外とコストが高いです。
- 何から置くか。
- どのサイズから作るか。
- 余白はどうするか。
- 見出しをどのくらいの大きさにするか。
ここで迷っている時間は、制作しているようで、実はまだスタート地点の周りをうろうろしているだけです。
だから私は、完璧なテンプレートではなく「6割くらいできているパーツ」をストックしています。
たとえば、こんなもの
- いつもの文字組みのセット
- よく使うボタンの形
- キャンペーン用のお決まりレイアウト
- 資料表紙の文字サイズ
- 注意書きや補足文の見せ方
- 人物切り抜きの置き方
ゼロから生み出すのではなく、すでにそこにあるものを、今の案件に合わせて微調整する。
ゼロから100を作るのではなく、60あるものを案件に合わせて80や90に寄せる感覚です。
私はバナー用、営業資料用、サムネ用で分けて保存し、毎回そこから始めるようにしました。
新規着手の初動が1件あたり15分から20分ほど短くなりました!
それじゃ似たようなデザインばかりになるのでは?
まぁ聞いてくださいよ
半完成品は完成デザインを使い回すものではありません。
毎回悩まなくていい部分だけ、先に決めておくためのものです。
実際は、型があるからこそ、その先の「その案件独自の工夫」に時間を使いやすくなります。
私はバナー用、営業資料用、サムネ用でざっくり分けて保存しています。
案件によって合わないものは、普通に使いません。
それでも、最初の画面で「さて、何から作ろう」と止まる時間は減りました。
この初動が軽くなるだけで、1日の疲れ方がかなり変わります。
解決策③ 修正を減らしたいなら、提出前の確認順を固定する
修正が多い人は、センス以前に確認順が毎回バラバラなことがあります。
デザインの全体像を見ながら、同時に誤字脱字もチェックする。
ついでに金額も見て、余白も見て、書き出し設定も見る。
脳の構造的にけっこう無理があります
だから最後は、自分を「校閲マシーン」だと思い込んで、見る順番を固定します。
おすすめは、この順番です。
- 文字
- 数字
- 配置
- 余白
- 書き出し設定
見た目を先に確認すると、誤字や金額ミスを見落としやすいです。
デザインのバランスを見るときと、文字の間違いを探すときでは、頭の使い方が違います。
見た目を整えたあとに致命的な金額ミスを見つけると、精神的なダメージがデカすぎて立ち直れなくなりますからね……。
チェックリストは長くしなくていいです。
というか、長いチェックリストは、たぶん見なくなります。
最低限なら、次の5つで足ります。
- 誤字脱字はないか
- 金額・日付・数字は合っているか
- 要素のズレはないか
- 余白が詰まりすぎていないか
- サイズ・形式・ファイル名は合っているか
私も以前は、提出後に細かい差し戻しが続くことがありました。
「ここだけ直してください」が何度も来ると、そのたびに集中が切れます。
確認順を固定してから、少なくとも自分の見落としで戻る回数は減りました。
全部ゼロにはなりません。
クライアント都合の変更もあります。カス。
それでも、自分側で防げる修正を減らすだけで、かなり楽になります。
速く作るより、戻されないほうが結局は早いです。
明日から変えるなら、この3つだけでいい
いきなり全部変えようとすると続きません。
まずは、明日の案件から使う前提で3つだけ決めるのが現実的です。
- 着手前に完成条件を一文でメモすること
- よく使うデータを3種類だけ半完成品として保存すること
- 提出前チェックの順番を固定すること
ここまでなら、今日の終業前30分でも触れます。
大事なのは、便利そうなツールを探し回ることではなく、毎日発生している小さな足止めを消すことです。
- 素材探しで止まるのか。
- 判断で止まるのか。
- 修正で戻るのか。
- 確認漏れで書き出し直すのか。
止まる場所が分かれば、対策もかなり決めやすくなります。
忙しい人ほど、速さより先に見る場所がある
このやり方は、月に数件の大型案件をじっくり進める人より、細かい案件が並走している人に向いています。
たとえば、
- 社内デザイナーで、制作以外に確認連絡や資料修正も抱えている人
- フリーランスで、営業・見積もり・請求まで自分で回している人
- バナーやSNS画像など、短納期の制作が続く人
- 毎日忙しいのに、なぜか制作が進んだ感じが薄い人
こういう人ほど、1回ごとのロスは小さくても、積み重なったときの負担が大きいです。
忙しいと、つい新しい勉強を増やしたくなります。
- もっと上手くならなきゃ。
- もっと速く作れるようにならなきゃ。
- もっと良いツールを使わなきゃ。
そう思いやすいです。
でも、日々の足止めを放置したまま勉強を増やすと、さらに時間がなくなります。
先に整えるべきなのは、今の仕事が詰まりやすい場所です。
そこが軽くなると、勉強する時間も作りやすくなります。
まずは明日の1件だけでいい
行動を変えるなら、全部の案件で一斉に始めなくて大丈夫です。
一気に全部変えようとすると、その準備だけでまた時間が溶けます。
まずは明日の最初の1件だけで、「まず一言、メモを書いてからマウスを握る」。
これだけ試してください。
慣れてきたら、半完成品から始める。
提出前の確認順を固定する。
そのくらいの順番で十分です。
1件だけなら、失敗しても大きな負担にはなりません。
合わなければ戻せばいいだけです。
逆に合わない部分はすぐ捨てていいです。
時間削減は気合いで回すものではなく、続く形だけ残せば十分です。
毎日少し楽になるやり方を持っている人は、締切前の焦り方が変わります。
制作の密度を落とさずに余白を作りたいなら、明日はスピードを上げるのではなく、止まる回数を減らすところから始めてください。
まとめ
速く作ろうとしているのに苦しいなら、見る場所が少し違うのかもしれません。
手を速くする前に、止まる場所を減らす。
- 迷う
- 探す
- 戻る
ここが多いと、ずっと働いているのに前に進んだ感じが薄くなります。
明日からやるなら、難しいことはいりません。
- 完成条件を一文で書く
- 半完成品から始める
- 確認順を固定する
まずは1件だけで大丈夫です。
そこで少しでも楽になるなら、そのやり方は残す価値があります。
制作の密度を落とさずに余白を作りたいなら、スピードを上げる前に、止まる場面を減らすところから始めてください。
