フリーランスとして仕事を続けていると、あるタイミングで「見積書を送ってもらえますか?」と言われる場面が出てきます。
最初のうちは、募集文に書かれた金額で受ける仕事が多いかもしれません。
けれど、継続案件や紹介案件が増えてくると、依頼内容がふわっとした状態で相談されることも増えます。
この制作、いくらくらいでお願いできますか?
だいたいの費用感を知りたいです
ココナラの料金表を見てくれよ…
「費用感」ってなんだ…キメェ日本語……
社内確認用に見積書をください!
う、うわああああああああ
こう言われたとき、ただ金額だけを書いた見積書を送ってしまうのは、少しもったいないです。
見積書は、単なる事務書類ではありません。
フリーランスにとっては、仕事内容・条件・対応範囲・信頼感をまとめて伝えられる大事な営業資料です。
フリーランスの見積書は「金額表」ではなく「提案資料」に近い
見積書というと、品目・数量・単価・合計金額を並べるだけの書類だと思われがちです。
もちろん、最低限の情報として金額は必要です。
ただ、クライアントが本当に見ているのは、金額そのものだけではありません。
たとえば、同じ30万円の見積書でも、次の2つでは印象が変わります。
印象が弱い見積書
- Webサイト制作 一式 300,000円
これだけだと、何が含まれていて、何が含まれていないのかが分かりません。
ページ数、デザイン範囲、コーディング範囲、原稿作成、画像選定、サーバー対応、修正回数などが曖昧です。
クライアント側も不安になりますし、後から追加作業が発生したときに揉めやすくなります。
印象が強い見積書
- Webサイトデザイン:5ページ
- コーディング:5ページ
- スマートフォン表示調整
- お問い合わせフォーム設置
- 原稿・画像素材はご支給
- サーバー・ドメイン費用は別途
- 修正は各ページ2回まで
ここまで書かれていると、クライアントは依頼内容を具体的にイメージできます。
- 「この人は、仕事の範囲をきちんと整理してくれている」
- 「追加費用が発生するラインも分かりやすい」
- 「社内にも説明しやすい」
そう感じてもらえれば、見積書そのものが受注の後押しになります。
個人的には、見積書を軽く扱う人ほど、あとで自分の首を絞めやすいと思っています。
口頭でなんとなく決めた仕事ほど、「これも込みだと思っていました」が起きやすいからです。
見積書は、自分を守るための書類でもあります。
フリーランスの見積書に入れる基本項目
見積書には、最低限入れておきたい項目があります。
制作ツールやテンプレートによって多少違いはありますが、基本は以下です。
- 宛名
- 発行日
- 見積書番号
- 件名
- 納品予定日
- 見積有効期限
- 支払い条件
- 品目
- 数量
- 単位
- 単価
- 金額
- 小計
- 消費税
- 合計金額
- 備考欄
- 発行者情報
この中でも、フリーランスが特に意識したいのは次の4つです。
- 件名
- 見積有効期限
- 支払い条件
- 備考欄
金額以外の部分で、仕事の進めやすさがかなり変わります。
件名には「何を作るか」だけでなく「何のために作るか」を入れる
見積書の件名に、ただ「チラシ制作」「Webサイト制作」「パンフレット制作」と書いていませんか?
ダメなんですか?
ダメではありませんが、
それだけでは作業名で終わってしまいます。
見積書の件名には、できるだけ目的が伝わる言葉を入れるのがおすすめです。
たとえば、次のような形です。
- 新サービス告知用チラシ制作
- 採用強化に向けた会社案内パンフレット制作
- 問い合わせ獲得を目的としたLP制作
- 展示会配布用リーフレット制作
- ブランド認知向上に向けたWebサイト改修
「何を作るか」だけではなく、「何のために作るか」まで入れると、クライアント側もプロジェクトの目的を再確認しやすくなります。
フリーランス側にとっても、ただ作業を請ける人ではなく、目的から考えてくれる人という印象につながります。
見積有効期限は、スケジュールを守るために使う
見積書には、見積有効期限を入れるのが一般的です。
なんですかそれ?
提示した見積書の金額や条件で契約できる期間です。
見積書に有効期限を書く主な理由は、
①価格や条件などの変動に備えるため
②顧客に早めの契約や発注を促すため
の2つです。
よくあるのは、発行日から1か月程度です。
ただ、フリーランスの場合は、自分の稼働状況や案件の開始希望日も考えて設定したほうがいいです。
たとえば、次のように使い分けます。
早めに発注判断がほしい場合
見積有効期限を短めにします。
例:発行日から7日〜10日程度
月後半の予定が埋まりそうなときや、早めに制作枠を押さえたいときに向いています。
ただし、急かしている印象にならないよう、メール本文で理由を添えるのが大事です。
制作スケジュール確保の都合上、今回のお見積り有効期限は〇月〇日までとしております。
期限を過ぎる場合は、納期を再調整させていただく場合がございます。
検討期間が必要な案件の場合
発行日から1か月程度にします。
社内確認や予算承認が必要な案件では、ある程度の検討期間が必要です。
この場合は、急かしすぎないほうが話が進みやすいです。
社内確認期間を考慮し、お見積り有効期限は発行日より1か月としております。
ご発注時期によっては、納品スケジュールを再確認させていただきます。
いつでも対応しやすい軽めの案件の場合
長めに設定しても構いません。
ただし、長すぎる期限は「いつでも空いている人」という印象を与える場合もあります。
新規クライアントより、すでに関係性がある相手に向いています。
見積有効期限は、単なる日付ではありません。
受注タイミングと制作スケジュールを調整するための材料です。
見積書番号は、請求書や契約書とつなげて使う
見積書番号は、ただの管理番号として流してしまいがちな項目です。
けれど、案件が増えてくるほど、この番号が役に立ちます。
見積書番号を請求書や契約書にも記載しておくと、どの案件の書類なのかが確認しやすくなります。
たとえば、請求書には次のように書けます。
品目:〇〇制作一式
備考:詳細は見積書No.202604-001に準じます。
契約書でも、業務範囲を見積書に紐づける書き方ができます。
本業務の詳細は、〇年〇月〇日付の見積書No.202604-001に準じます。
これをしておくと、書類ごとに細かい品目を何度も転記する手間が減ります。
転記ミスも防ぎやすくなります。
特に、Web制作・冊子制作・撮影・広告運用など、項目が多い案件では便利です。
支払い条件はフリーランス側から提示していい
見積書で意外と抜けやすいのが、支払い条件です。
フリーランスは、納品後一括払いを前提にしがちです。
けれど、すべての案件を納品後払いにすると、資金繰りが苦しくなる場合があります。
特に注意したいのは、次のような案件です。
- 制作期間が長い案件
- 外注費が先に発生する案件
- 撮影費・素材費・交通費などの実費がある案件
- 月をまたいで作業する案件
- クライアント側の確認期間が長い案件
この場合は、着手金や分割払いを提案しても問題ありません。
よく使いやすい支払い条件は、以下です。
着手時50%・納品時50%
フリーランス側の未払いリスクを減らしつつ、クライアント側も全額前払いを避けられます。
初回取引や中規模案件に向いています。
着手時30%・中間時30%・納品時40%
制作期間が長い案件に向いています。
サイト制作、ブランディング、冊子制作、長期のコンテンツ制作などで使いやすい形です。
月末締め・翌月払い
毎月作業が発生する継続案件に向いています。
SNS運用、記事制作、デザイン月額契約、保守業務などで使いやすいです。
フリーランス側から支払い条件を出すのは、わがままではありません。
仕事を続けるための普通の交渉です。
もちろん、相手の社内ルールもあります。
だからこそ、最初から見積書に明記しておくと話が早くなります。
見積書の備考欄には「追加費用が発生する条件」を書く
見積書の備考欄は、かなり大事です。
ここが空欄のままだと、対応範囲が曖昧になります。
クライアント側に悪気がなくても、「これもお願いできますか?」が増えていきます。
備考欄には、最低限次の内容を入れておきたいところです。
- 修正回数
- 納品形式
- 対応範囲
- 別途費用が発生する条件
- 素材支給の有無
- 実費精算の有無
- スケジュール変更時の扱い
たとえば、次のような文言です。
上記内容から変更が生じる場合、または当初想定していない作業が発生する場合は、別途お見積りいたします。
この一文があるだけで、追加費用の相談がしやすくなります。
言いづらいことを後から切り出すより、最初から書いておくほうが、お互いに気持ちよく進められます。
値引きする場合は、理由を必ず書く
値引きをする場合は、必ず理由を書きます。
理由を書かずに安くすると、次回も同じ金額で依頼されるおそれがあります。
それだけは絶対にダメだ
値引きには、たとえば次のような名目を付けられます。
- 初回限定割引
- 継続契約割引
- 一括発注割引
- 納期調整割引
- 実績掲載許可による割引
大事なのは、「今回だけの条件」だと分かる形にすることです。
初回ご依頼特別価格として、通常価格より〇円お値引きしております。
次回以降は通常価格でのお見積りとなります。
値引きは、ただ安くするためのものではありません。
理由を添えれば、価格の基準を守りながら柔軟に対応できます。
源泉徴収がある仕事は、税抜・消費税・源泉所得税を分けて書く
ライティング、デザイン、撮影、講演などの報酬では、源泉徴収が関係する場合があります。
見積書や請求書では、税抜金額・消費税・源泉所得税・差引支払額を分けて書いたほうが分かりやすいです。
たとえば、報酬10,000円の場合です。
- 小計:10,000円
- 消費税:1,000円
- 源泉所得税:1,021円
- 差引支払額:9,979円
源泉所得税の扱いは、クライアント側の経理ルールにも関わります。
不安な場合は、事前に確認しておくと安心です。
フリーランス側も、入金額だけを見て「思ったより少ない」とならないように、見積段階で整理しておきたいところです。
フリーランスの見積書は、説明までセットで完成する
見積書は、送って終わりではありません。
メール本文や打ち合わせで、次のように補足すると通りやすくなります。
今回は5ページ制作でお見積りしています。
ページ追加が発生する場合は、1ページあたり〇円で追加対応いたします。
修正は2回まで含めています。
3回目以降の修正や、方向性が変わる修正は別途お見積りとなります。
素材はご支給を前提にしています。
こちらで画像選定や原稿作成を行う場合は、追加費用が発生します。
ここまで伝えておくと、クライアントも判断しやすくなります。
見積書は、金額を押しつけるための書類ではありません。
「この範囲ならこの金額です」と共有するための資料です。
だからこそ、説明を添えるだけで印象が変わります。
まとめ|見積書の書き方で、フリーランスの仕事は進めやすくなる
フリーランスの見積書は、金額を伝えるだけの書類ではありません。
仕事内容、対応範囲、支払い条件、追加費用の条件、納品までの流れを整理して伝えるための大事な資料です。
特に意識したいのは、次の点です。
- 件名には制作目的を入れる
- 見積有効期限には理由を添える
- 見積書番号を他の書類とつなげる
- 支払い条件はフリーランス側から提示する
- 備考欄に追加費用の条件を書く
- 値引きには理由を添える
- 見積書はメールや打ち合わせで説明する
見積書が丁寧だと、クライアントは安心して発注しやすくなります。
同時に、フリーランス側も無理な追加対応や支払い遅れを避けやすくなります。
見積書は、安く見せるための紙ではありません。
自分の仕事を、きちんと価値あるものとして扱ってもらうための資料です。

