見積書を出して、相手から「お願いします」と言われたら、どうしますか?
すぐにでも作業に入ります!!
ちょ待てよ
金額、納期、作業範囲、修正回数、支払い条件。
このあたりが曖昧なまま進めると、あとから揉めやすくなります。
- 「言った」「聞いていない」
- 「そこまで含まれていると思っていた」
- 「追加料金がかかるなんて知らなかった」
フリーランス側からするとかなりきつい話ですが、仕事の現場では普通に起こります。
だからこそ、案件が始まる前に確認しておきたいのが、発注書と契約書です。
どちらも取引を安全に進めるための書類ですが、役割は同じではありません。
発注書と契約書の違い
発注書と契約書の違いをざっくり分けると、次のようになります。
| 発注書 | クライアントが「この内容で依頼します」と示す書類 |
| 契約書 | 双方が「この条件で仕事を進めます」と細かく決める書類 |
発注書には、案件名、金額、数量、納期、支払い条件などが書かれます。
見積書の内容をもとに作られることも多く、発注の意思を確認する役割があります。
一方で契約書には、もっと細かい条件を入れます。
たとえば、次のような内容です。
- 納品物の範囲
- 修正回数
- 支払い時期
- 著作権の扱い
- 秘密保持
- 途中キャンセル時の対応
- 損害が出た場合の責任範囲
- 契約解除の条件
発注書だけでは足りない部分を、契約書で補うイメージです。
発注書だけで仕事を始めるのは危ない?
発注書があれば安心ですよね。
何もない状態よりは安心です。
ただし、発注書だけで細かい条件まで守れるとは限りません。
たとえば、発注書に「Webサイト制作一式」とだけ書かれていた場合、どこまでが一式なのか判断しにくくなります。
- トップページだけなのか
- 下層ページも含むのか
- スマホ表示の調整は含むのか
- 問い合わせフォームの設定は含むのか
- 納品後の修正は何回までなのか
こういう部分が曖昧なままだと、フリーランス側の負担が増えます。
「ここまでやってくれると思っていました」と言われたとき、反論しづらいんですよね。
仕事としては受けているけれど、作業範囲がぼんやりしている。
一番面倒くさい状態です。

契約書はフリーランス側から出してもいい
契約書というと、クライアント側から出てくるものですよね?
いえ、フリーランス側から契約書の案を出しても問題ありません。
むしろ、自分の仕事を守りたいなら、フリーランス側でたたき台を用意しておいたほうが安心です。
クライアントが用意した契約書は、どうしてもクライアント側に有利な内容になりがちです。
もちろん悪意があるとは限りません。
会社としていつも使っているひな形を出しているだけ、というケースもあります。
ただ、その中に自分に不利な条件が入っていないかは、必ず確認したほうがいいです。
特に見ておきたいのは、次の項目です。
- 報酬の支払い時期
- 検収の期限
- 修正対応の範囲
- 著作権の移転時期
- 納品後の責任範囲
- キャンセル料
- 再委託の可否
- 損害賠償の上限
契約書を出すと嫌がられるかも、と不安になる人もいると思います。
でも、ちゃんとした取引先ほど、契約書を交わすことに抵抗はありません。
むしろ、条件をきちんと確認してから仕事を始める人だと見てもらえることもあります。
逆に、契約書の話をしただけで露骨に嫌がる相手なら、その時点で少し慎重になったほうがいいです。
契約書を交わす流れ
契約書は、いきなり完成版を送りつけるものではありません。
基本的には、次の流れで進めます。
- 契約書の案を作る
- 相手に確認してもらう
- 修正点をすり合わせる
- 内容に合意する
- 署名・押印、または電子契約で締結する
- 双方で保管する
最初に送る段階では、日付や署名欄を空けた状態で問題ありません。
「この内容で進めてよいか」を確認するための案として送ります。
相手から修正が入ることもあります。
そのときは、慌てて全部受け入れる必要はありません。
見るべきポイントはシンプルです。
- 合意した内容とずれていないか
- 話していない条件が追加されていないか
- 自分だけに重い負担がかかっていないか
契約書は、ただの事務書類ではありません。
あとから揉めたとき、自分の立場を守るための材料になります。
相手が契約書を直してくれない場合は覚書を使う
大きな会社と取引すると、相手の契約書を変更してもらえないことがあります。
- 「社内確認に時間がかかる」
- 「このひな形でしか進められない」
- 「法務部の都合で変更できない」
こう言われることもあります。
この場合、無理に契約書そのものを変えようとすると、話が止まってしまうかもしれません。
そこで使えるのが、覚書です。
覚書は、契約書とは別に、双方で合意した内容を残すための書類です。
たとえば、契約書には修正回数が明記されていないけれど、実際には「修正は2回まで」と合意している。
この場合、その内容を覚書に残しておくと、あとから確認しやすくなります。
メールだけで済ませるより、書面として残しておいたほうが安心です。
紙の契約書には収入印紙が必要な場合がある
紙で契約書を作る場合、契約内容によっては収入印紙が必要になることがあります。
収入印紙(しゅうにゅういんし)は、契約書や領収書などの「課税文書」を作成した際に、国に印紙税(税金)や手数料を納めるために貼付する証票です。
特に、請負契約にあたる仕事では注意が必要です。
デザイン制作、Web制作、記事制作、動画制作などは、内容によって請負契約として扱われるケースがあります。
契約金額によって印紙税額も変わるため、必要な場合は国税庁の最新情報を確認しておきたいところです。
電子契約の場合はどうなるんですか?
紙の契約書を作成しないため、印紙税がかからない扱いになります。
郵送の手間も減るので、継続して案件を受けるフリーランスなら、電子契約サービスを使う選択肢もあります。
ただし、契約内容そのものの確認が雑になってしまっては意味がありません。
電子契約でも紙の契約書でも、読むべき部分は同じです。
契約前に最低限チェックしたい項目
フリーランスが仕事を始める前に、最低限チェックしたい項目をまとめます。
仕事内容
- 何を作るのか。
- どこまで作るのか。
- 何を納品すれば完了なのか。
ここが曖昧だと、作業範囲がどんどん広がります。
「バナー制作」なら、サイズ、点数、使用媒体、納品形式まで確認します。
「Webサイト制作」なら、ページ数、対応範囲、原稿や画像の支給有無も確認します。
報酬
金額だけでなく、税別か税込かも確認します。
さらに、支払い時期も大事です。
- 納品月末締め翌月末払い
- 検収完了後30日以内
- 着手金あり
- 分割払い
ここをぼかすと、入金タイミングが読めなくなります。
フリーランスにとって、入金時期はかなり大事です。
仕事は終わったのにお金が入らない状態が続くと、精神的にもきつくなります。
修正回数
修正回数は必ず決めておきたい項目です。
「修正対応込み」とだけ書くと、何回でも直す話になりやすいです。
おすすめは、次のように書くことです。
- 初稿提出後の修正は2回まで
- 3回目以降は別途見積
- 当初の依頼内容から外れる変更は追加費用
これだけでも、かなり揉めにくくなります。
納期
納期は、自分の作業日だけで考えないほうがいいです。
クライアントの確認日数も含めて考える必要があります。
たとえば、こちらが3日で初稿を出しても、相手の確認に1週間かかれば、そのぶん全体の予定は後ろにずれます。
「確認に時間がかかった場合、納期を調整する」と入れておくと安心です。
著作権
デザインや文章、イラスト、写真、動画などの仕事では、著作権の扱いも確認します。
- 著作権を譲渡するのか
- 使用権だけを渡すのか
- 実績として掲載してよいのか
- 改変して使ってよいのか
- 二次利用は別料金なのか
ここを曖昧にすると、あとから「自由に使えると思っていた」と言われることがあります。
特に、制作物を実績として出したい場合は、契約前に確認しておくほうが安全です。

契約書を交わさない案件は受けないほうがいい?
小さな案件まで、すべて厳密な契約書を交わすのは現実的ではないかもしれません。
数千円〜数万円の軽い作業なら、メールや発注書で進むこともあります。
ただし、次のような案件では、契約書を交わしたほうがいいです。
- 金額が大きい
- 制作期間が長い
- 修正が多くなりそう
- 関係者が多い
- 納品物の権利関係が複雑
- 初めて取引する相手
- 相手の要望が曖昧
- 途中変更が起きそう
小さい案件だから安全、とは限りません。
むしろ、条件が曖昧な小さな案件ほど、後から手間だけ増えることもあります。
契約書は相手を疑うためではなく、安心して仕事をするためにある
契約書の話をすると、少し堅く感じる人もいるかもしれません
でも、契約書は相手を疑うためのものではありません。
お互いに気持ちよく仕事を進めるために、先にルールを確認しておくためのものです。
フリーランスは、営業、制作、連絡、請求、トラブル対応まで自分で抱えることになります。
だからこそ、最初の段階で条件を曖昧にしないことが大切です。
「たぶん大丈夫」で始めた仕事ほど、あとから自分を苦しめます。
契約書や発注書を整えるのは、面倒に見えて、結局は自分の時間とお金を守る行動です。
まとめ
フリーランスが仕事を受けるときは、発注書と契約書の違いを理解しておく必要があります。
発注書は、クライアントが依頼の意思を示す書類。
契約書は、仕事内容や報酬、納期、修正範囲、権利関係などを細かく確認する書類です。
特に、金額が大きい案件、期間が長い案件、初めての取引先との案件では、契約書を交わしてから着手したほうが安心です。
契約書を出すことは、失礼なことではありません。
むしろ、仕事としてきちんと向き合う姿勢でもあります。
なんとなく始めて、あとから困るより、最初に確認する。
フリーランスとして長く仕事を続けるなら、このひと手間は省かないほうがいいです。
