Adobe、もう無敵じゃないかもしれません。
少し前まで、デザインや映像の仕事をするならAdobeは半ば必須でした。
Photoshop、Illustrator、Premiere Pro、After Effects。
このあたりを使えることが、仕事の前提みたいになっていた時代が長かったですよね。
学校でも会社でもフリーランスでも、とりあえずAdobe。
あの空気は本当に強かったです。
最近は「とりあえずAdobe」がじわじわ崩れてきた
理由はいくつかあります。
単純に高い
Creative Cloudは必要なアプリが多い人ほど助かる反面、「いや、そこまで全部はいらないんだけど」と思う人にもまとめて負担がのしかかります。
しかもプランまわりがわかりやすいとは言えず、気づいたら毎月それなりの金額を払い続けている。
長く使っている人ほど、この重さは身にしみているはずです。
AI寄りの動き
もちろんAIそのものが悪いわけではありません。
ただ、使う側が求めていることと、会社が押し出したい方向が少しズレ始めているように見えるんですよね。
「もっと快適に、もっと納得感のある価格で使いたい」と思っている人に対して、返ってきたのが別の話だった。
ここで冷めた人は少なくないと思います。
競合ツールの強化がすごい
そして今、その不満を拾うように、競合が一気に強くなっています。
今週の流れだけ見ても、その変化はかなりわかりやすかったです。
Autograph
After Effectsに近いモーションデザイン系ソフトとして知られていますが、2023年に出たころは永久ライセンスが1,795ドル、サブスクでも月59ドルと、なかなか気軽には触れない価格でした。
ところが昨年、Cinema 4Dの開発元であるMaxonに買収されたあと、個人ユーザー向けに無料アクセスを付けて再リリース。
これ、驚いた人も多かったんじゃないでしょうか。
高機能だけど高いソフトが、急に「個人なら使っていいよ」という立ち位置になったわけです。
Canva
2月にCavalryを買収したあと、上位プランに囲うのではなく、モーショングラフィックスソフト全体を無料化しました。
こういうのを見ると、「もうユーザーを増やした会社が勝つ」という空気を感じます。
触ってもらわないと始まらない。その感覚がかなり強い。
Canvaって、昔は“手軽なデザインツール”という印象が先に立っていた人もいたと思うんですが、今はかなり違います。
じわじわじゃないんですよ。
ちゃんと本気でAdobeの周辺を取りに来ている感じがします。
Affinity
Illustrator、Photoshop、InDesignの代わりとして名前が出ることが多かったあのソフト群も、以前は3本まとめて170ドル、単体で70ドルくらいかかっていました。
それが今は統合されて無料。
これはさすがに強いです。
昔なら「Adobeは高いけど、代替ソフトも結局それなりにお金がかかるしな」で思考停止できたんです。
でも無料まで来ると話が変わります。
試さない理由がなくなるし、「こっちでも十分では?」と考える人が増えるのも当然です。
DaVinci Resolve 21
Premiere Proの対抗馬として名前が挙がることは前から多かったですが、今回の新バージョンではカラー補正やマスキングまわりがさらに扱いやすくなり、Apple PhotosやAdobe Lightroomカタログからの読み込みにも対応しました。
しかもAffinityの.afファイル形式にも対応。
ここまで来ると、無料ツール同士を組み合わせて仕事を回す流れが、もう空想ではなくなってきます。
前までは「単体ではいいけど、行き来が面倒なんだよな」で止まっていた人もいたはずです。
でもそこも少しずつ埋まってきた。これは空気変わりますよ。
強くなっているのは無料組だけじゃない
Creator Studio(Apple)
Appleが1月に出したCreator Studioも、かなりインパクトがありました。
Final Cut Pro、Logic Pro、Pixelmator Pro、Motion、Compressor、MainStageまで含めて月額12.99ドル。
Creative Cloud Proが月額69.99ドルのままなのを見ると、さすがに「え、そんなに差があるの?」となります。
しかもAppleは、サブスクだけに閉じず、App Storeで個別アプリの買い切りも残しています。
これって利用者からすると嬉しいんですよ。
高い安いだけの話ではなくて、「自分で選べる」感じがあるからです。
Adobeへの不満って、金額だけではなく、この息苦しさも含んでいる気がします。
実際、Appleの価格設定を見て、「Lightroomの代わりまであれば完璧なのに…」といった反応も出ていました。
そこを今はDaVinci Resolveが一時的に埋めている、そんな見え方もあります。
Procreateの立ち回り
さらに面白いのは、これは値段の話だけではないことです。
Procreateが強い支持を集めてきたのは、単に安いからではありません。
AIに対してはっきり距離を置く姿勢も含めて、「その考え方が好きだから使う」という人がちゃんといる。
ツールって、昔よりもずっと“会社の態度”まで見られるようになりましたよね。
性能だけでは決まらない時代に入っている感じがあります。
Blenderは3Dソフトの最強格
Blenderも同じです。
無料のオープンソース3Dソフトという言い方だけでは、もう足りない気がします。
新機能は次々入るし、現場でも名前が通るし、アカデミー賞受賞作品に関わるレベルまで来ている。
ここまで来たら、「無料なのにすごい」ではなく「普通に強いソフト」です。
Adobeの終焉を感じる
こうして見ると、Adobeが急にダメになったというより、まわりが育ちすぎたんですよね。
しかも、そのタイミングでAdobe側も利用者の不満をうまく受け止めきれなかった。
だから今、「高いけど仕方ないからAdobeを使う」という空気が少しずつ崩れています。
昔は、Adobeから離れるなんて現実味が薄かったんです。
ファイルの互換性もあるし、取引先もAdobe前提だし、自分だけ別環境にするのは怖い。
結局そこに戻るしかない、という雰囲気がありました。
でも今は違います。
無料でかなり戦えるツールがある。安くて魅力的な選択肢もある。しかもそれが一個ではない。
画像編集、映像編集、モーション、3D、いろんな場所で「Adobeじゃなくても回るかも」と思える材料が揃ってきました。
これは、クリエイター側から見るとけっこうアツい変化です。
ずっと「高いけど払うしかない」「慣れてるから離れづらい」で使ってきた人ほど、この変化に救われる部分があると思います。
選べるって、やっぱり大事なんですよ。しかも今は、妥協して選ぶ感じじゃない。
ちゃんと候補として強いソフトが並んでいる。その状態まで来たのが大きいです。
以前、AdobeはFigmaの買収に失敗したあと、Adobe XDの提供終了にも追い込まれました。
あの流れを見たとき、「あ、Adobeでも絶対ではいられないんだな」と感じた人は多かったはずです。
かつては、Adobeのアプリに依存しない制作環境なんて現実離れしていました。
でも今は、もうそこまで遠い話ではありません。
むしろ今は、「Adobe以外を使う理由がちゃんとある時代」に入ったと言ったほうが近い気がします。
もちろん、現時点でAdobeが消えるわけではありません。
現場での標準性も強いし、長年積み上げてきた信頼もある。
それでも、一強だったころの圧倒的な空気は確実に薄れてきました。
そしてその変化は、値下げ合戦だけでは終わらないと思います。
これからは「どのツールがいちばんすごいか」だけではなく、
「どの会社がいちばん利用者の気持ちをわかっているか」まで問われるはずです。
Adobeをずっと使ってきた人ほど、今の流れは複雑だと思います。
慣れているぶん、離れにくい。でも、他がここまで来ると気にならないわけがない。
「あれ、もしかしてもうAdobe一択じゃない?」
そう感じた時点で、時代はもう少し動き始めているのかもしれません。